ハンドメイド卸売価格の決め方
雑貨店やセレクトショップへ卸売・委託販売を始める作家向けに、卸掛け率50〜70%の考え方、最低ロット、支払い条件、価格計算の実務を解説します。
この記事のポイント(読了 約8分)
- -卸売価格は販売価格から逆算し、利益が残る掛け率を選ぶ
- -委託販売と買取卸では、在庫リスクと手数料の考え方が変わる
- -最低ロット、納期、支払い条件まで決めておくと取引が続けやすい
ハンドメイドの卸売価格は「安くする」ではなく「続けられる条件を作る」こと
minne、Creema、BASEで販売していると、雑貨店やセレクトショップから「お店に置きませんか」と声がかかることがあります。うれしい反面、最初に悩むのが卸売価格です。
ネット販売では自分で販売価格を決め、お客様へ直接届けます。一方で実店舗への卸売や委託販売では、店舗側の販売手数料、陳列、接客、在庫管理のコストも関わります。そのため、ネット販売と同じ感覚で価格を決めると、思ったより利益が残らないことがあります。
特に注意したいのは「ネットショップで売れないから安くする」という判断です。いったん安い価格を基準にしてしまうと、後から委託販売や卸売を始めたときに、手数料や掛け率を入れた瞬間に苦しくなります。卸売を考えるなら、最初から小売価格、卸価格、利益の関係を見ておくことが大切です。
卸売と委託販売の違い
まず、卸売と委託販売は似ていますが、お金の流れが違います。
卸売は、店舗が作家から商品を買い取って販売する形です。作家は納品時または締め日に卸価格で代金を受け取り、売れるかどうかのリスクは店舗側が持ちます。その分、店舗は利益を確保する必要があるため、卸掛け率は低めになりやすいです。
委託販売は、商品を店舗に預け、売れた分だけ精算される形です。売れ残った商品は返ってくることが多く、在庫リスクは作家側に残ります。その代わり、少量から置いてもらいやすく、初めて実店舗に挑戦する作家にとって入り口になりやすい方法です。
どちらが良い悪いではなく、自分の制作ペース、在庫数、利益率に合うかで選びます。実店舗に並ぶと、イベントとは違うお客様に見てもらえる機会が増えます。作品の世界観を知ってもらうきっかけとして、手に取りやすい商品と利益率の高い商品を組み合わせる考え方も有効です。
卸掛け率50〜70%の考え方
ハンドメイドの卸掛け率は、小売価格の50〜70%がひとつの目安です。たとえば小売価格が3,000円の商品なら、卸価格は1,500〜2,100円程度になります。
50%は店舗側の利益が大きく、買取卸や販売に手間がかかる商品で使われやすい水準です。60%は比較的よく使われる中間ラインです。70%は作家側の利益を残しやすい一方、店舗側の利益が少なくなるため、販売力のある商品や回転の早い商品でないと受け入れられにくい場合があります。
ここで大切なのは、相場に合わせる前に「自分の最低ライン」を出すことです。材料費、制作時間、梱包費、送料、納品にかかる事務作業を入れて、赤字にならない卸価格を確認します。
たとえば小売価格3,000円、卸掛け率60%なら卸価格は1,800円です。材料費が600円、梱包費が100円、制作時間の人件費を900円と考えると、残りは200円です。ここに納品書作成、在庫管理、やり取りの時間が入ると、かなり薄い利益になります。
「売れる場所が増えるから」と無理に受けるより、続けられる条件かどうかを先に見ておきましょう。
卸価格の計算式
卸価格は、次の順番で考えると整理しやすくなります。
- 小売価格を決める
- 原価を出す
- 制作時間を金額に換算する
- 梱包費、納品時の送料、事務作業の負担を足す
- 卸掛け率をかけた価格で利益が残るか確認する
計算式にすると、卸価格は「小売価格 × 卸掛け率」です。利益は「卸価格 − 材料費 − 梱包費 − 制作時間分の人件費 − その他経費」で見ます。
たとえばアクセサリーを小売価格4,000円で販売している場合、60%卸なら卸価格は2,400円です。原価が800円、梱包費が150円、制作時間を1,000円と見るなら、粗い利益は450円です。ここに納品書作成や店舗との連絡時間も含めると、余裕はそれほどありません。
もし利益が少なすぎるなら、選択肢は3つあります。小売価格を上げる、卸掛け率を上げてもらう、卸向けの商品設計を見直すことです。すべての商品を同じ条件で出す必要はありません。利益率重視の商品、知ってもらうための商品、セット販売しやすい商品を分けて考えると、取引条件を作りやすくなります。
最低ロットは「作れる数」ではなく「利益が残る数」で決める
卸売では、最低ロットも重要です。1点から卸してしまうと、梱包、納品書、発送、連絡の手間に対して利益が残りにくくなります。
最低ロットは「一度に何点なら作れるか」だけでなく「一度の取引でどれだけ利益が残るか」で考えます。たとえば1点あたりの利益が500円でも、3点納品なら1,500円です。発送や事務作業に1時間かかるなら、かなり厳しい取引になります。
アクセサリーや布小物なら、初回は5点から10点、追加発注は3点からなど、無理のない単位を設定する方法があります。単価が高い作品なら少量でも成り立ちますし、ステッカーや小物のように外注も使える商品なら、まとまった数で利益を作りやすくなります。
委託販売で確認したい条件
委託販売では、売れたときの手数料だけを見て判断しないことが大切です。実際には、返送時の送料、破損時の対応、売上報告の頻度、精算日なども利益と手間に関わります。
- 委託手数料は何%か
- 売れ残り商品の返送送料はどちらが負担するか
- 破損、紛失、汚れがあった場合の責任範囲はどこまでか
- 売上報告は月1回か、随時か
- 精算日はいつか
- 値引き販売を店舗判断で行う可能性はあるか
- 納品時のディスプレイ備品やPOPは持ち込めるか
実店舗では、商品そのものだけでなく見え方も売上に影響します。イベント出店でも、小さい商品は遠くから見えにくく、POPやショップカードがあるだけで足を止めてもらいやすくなります。委託販売でも同じで、作品名、価格、使い方、ブランド名が伝わる小さなカードがあると、お客様が手に取りやすくなります。
袋にロゴやショップ名を入れる、ショップカードを見やすい位置に置くなど、購入後に思い出してもらう工夫も実店舗では効きます。店舗側に任せきりにせず、売り場で伝わる材料を用意しておくと、作家側の印象も残りやすくなります。
実店舗納品で価格が崩れないようにする
卸売や委託販売を始めるときは、ネットショップ、イベント、実店舗で価格が大きく崩れないように注意します。
同じ作品がBASEでは3,000円、実店舗では4,000円、イベントでは2,500円のようにバラつくと、お客様にも店舗にも説明しづらくなります。送料や限定品などの理由がある場合を除き、基本の小売価格はそろえておくほうが安心です。
イベントでは人が集まることでさらに人を呼ぶことがありますが、実店舗では作家本人が常に接客できるわけではありません。だからこそ、価格に納得してもらえる商品説明や見せ方が必要です。「なぜこの価格なのか」が素材、制作工程、使いやすさ、デザインで伝わる状態にしておくと、値下げに頼らず販売しやすくなります。
取引前に決めておきたい実務条件
価格が決まったら、取引条件も簡単な文章で残しておきましょう。口頭だけで始めると、あとから「送料はどちらが負担するのか」「いつ支払われるのか」で迷いやすくなります。
決めておきたいのは、卸価格または委託手数料、最低ロット、納期、支払い期日、送料負担、返品条件、再発注の方法です。特に支払い条件は重要です。月末締め翌月末払いなのか、納品後何日以内なのかで、材料の仕入れや制作計画が変わります。
また、店舗に合わせて大量に作る場合は、前払い金や一部入金を相談してもよい場面があります。ハンドメイドは制作時間そのものが在庫です。資金面でも時間面でも、無理のない条件にすることが長く続けるコツです。
卸売に向いている商品設計を考える
すべての作品が卸売に向いているとは限りません。制作に時間がかかりすぎる一点ものや、細かな説明が必要な作品は、直接販売のほうが価値を伝えやすい場合があります。
一方で、サイズ展開しやすい布小物、色違いで並べやすいアクセサリー、ギフト需要のある雑貨、ショップカードと相性の良い小さな商品は、実店舗でも見てもらいやすいです。自分が作りたいものだけでなく、自分や周りの人がほしいもの、SNSやイベントで反応があったものを卸向け候補にすると、店舗側にも提案しやすくなります。
SNSで「どんな色がほしいですか」「ギフト用ならどれを選びますか」と聞いてみるのも良い方法です。反応が多い商品は、実店舗でも説明しやすく、追加発注につながる可能性があります。
まとめ
ハンドメイドの卸売価格は、小売価格に掛け率をかけるだけでは決まりません。材料費、制作時間、梱包、納品、連絡、在庫リスクまで含めて、続けられる利益が残るかを見る必要があります。
卸掛け率は50〜70%が目安ですが、正解は作品や取引条件によって変わります。委託販売なら手数料と返送条件、買取卸なら最低ロットと支払い条件をしっかり確認しましょう。
実店舗に置いてもらうことは、作品を新しいお客様に知ってもらう大きな機会です。ただし、無理な価格で始めると制作が苦しくなります。自分の作品を長く届けるために、卸価格も小売価格も同じくらい丁寧に設計していきましょう。
卸売や委託販売を始める前に、今の価格で利益が残るか確認したい方は、ねだんナビの価格診断ページで一度見直してみてください。
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