委託販売と卸販売の違い
委託販売と卸販売の違いを、手数料・掛け率・在庫リスク・契約条件から比較。実店舗への納品を検討する作家向けに選び方を整理します。
この記事のポイント(読了 約8分)
- -委託販売は売れた分だけ精算、卸販売は納品時点で売上が立ちやすい販売形態
- -委託販売は手数料、卸販売は掛け率によって作家の手取りが大きく変わる
- -どちらを選ぶかは利益率、在庫リスク、制作体制、ブランドの見せ方で判断する
委託販売と卸販売は何が違う?
minne、Creema、BASEで販売を続けていると、実店舗や雑貨店から「お店に置きませんか」と声がかかることがあります。
そのときによく出てくるのが、委託販売と卸販売です。
どちらも「自分の作品を店舗で販売してもらう」形ですが、お金の流れ、在庫の持ち方、売れ残ったときの扱いが大きく違います。
ざっくり言うと、委託販売は「売れたら手数料を引いて精算」、卸販売は「店舗が作品を仕入れて販売」です。
同じ1,000円の商品でも、どちらの形を選ぶかで作家の手取りやリスクは変わります。ネット販売の価格をそのまま店舗用に使うと、思ったより利益が残らないこともあります。
委託販売とは
委託販売は、作品を店舗に預けて、売れた分だけ後から精算してもらう販売方法です。
たとえば販売価格2,000円、委託手数料30%なら、売れたときの作家の手取りは1,400円です。残りの600円が店舗側の手数料になります。
売れなかった作品は、一定期間後に返却されることが多いです。つまり、在庫の所有者は作家のままです。
委託販売の特徴は次の通りです。
- 初期の取引ハードルが比較的低い
- 少量から試しやすい
- 売れ残り在庫は作家に戻ることが多い
- 精算は月末締め、翌月払いなどが多い
- 店舗側の販売力や陳列によって売上が左右される
委託販売は、作品と店舗の相性を試したいときに向いています。イベントやマルシェで反応がよかった商品を、実店舗でも試してみるような使い方です。
一方で、売れるまで売上が確定しないため、材料費を先に出している作家側には資金負担があります。返却時の送料や破損時の扱いも、事前に確認しておきたいところです。
卸販売とは
卸販売は、店舗が作家から作品を買い取り、それを店舗で販売する方法です。
たとえば販売価格2,000円の商品を、掛け率60%で卸す場合、店舗への卸価格は1,200円です。店舗はその商品を2,000円で販売し、差額の800円を店舗の利益にします。
この「販売価格に対して何%で卸すか」を掛け率と呼びます。
卸販売では、納品した時点で作家側の売上が立ちやすく、売れ残りリスクは基本的に店舗側が持ちます。その代わり、委託販売よりも作家の1点あたりの手取りは低くなりやすいです。
卸販売は、安定して制作できる商品や、リピート納品に向いた定番商品と相性が良いです。アクセサリー、布小物、紙もの、雑貨などでも「同じ品質で追加納品できる」ことが大切になります。
手数料と掛け率の違い
委託販売では「手数料」、卸販売では「掛け率」で考えることが多いです。
言葉が違うだけでなく、利益計算の見方も変わります。
販売価格2,000円の商品で比べてみます。
- 委託手数料30%の場合:作家の手取りは1,400円
- 委託手数料40%の場合:作家の手取りは1,200円
- 卸掛け率60%の場合:作家の卸価格は1,200円
- 卸掛け率50%の場合:作家の卸価格は1,000円
一見すると、委託手数料40%と卸掛け率60%は、作家の手取りが同じ1,200円です。
ただし、意味は同じではありません。
委託販売は売れたときだけ1,200円が入ります。売れなければ入金はなく、作品は戻ってきます。
卸販売は、店舗が仕入れた時点で1,200円の売上になります。売れ残ったとしても、原則として作家に戻ってこない取引です。
同じ手取り額でも、売上確定のタイミングと在庫リスクが違う。ここが大きなポイントです。
在庫リスクは誰が持つ?
委託販売では、在庫リスクは作家側に残りやすいです。
店舗に置いてもらえるのは魅力ですが、売れなかった場合は返却されます。季節商品や流行色の商品は、返却された時点で売りづらくなっていることもあります。
卸販売では、基本的に店舗が在庫リスクを持ちます。作家側は納品分の売上を確保しやすくなりますが、店舗側は売れ残りリスクを負うため、掛け率は低めに設定されることがあります。
作家側から見ると、委託販売は「販売機会を増やす方法」、卸販売は「まとまった売上を作る方法」と考えると整理しやすいです。
ただし、卸販売でも返品条件がある契約や、一定期間売れなければ交換を求められるケースもあります。名前だけで判断せず、契約内容を確認しましょう。
契約条件で確認したいこと
委託販売でも卸販売でも、口約束だけで進めるのは避けたいところです。
特に実店舗取引では、作品の破損、紛失、返送、支払い時期など、ネット販売とは違う確認事項があります。
最低限、次の項目は事前に確認しておくと安心です。
- 販売価格は誰が決めるか
- 委託手数料または卸掛け率
- 精算日、支払日、振込手数料の負担
- 納品数、追加納品のタイミング
- 破損、紛失、盗難時の負担
- 売れ残り商品の返却方法と送料
- セール販売や値下げの可否
- SNS掲載、店頭POP、ショップカード設置の可否
特に価格については、「店舗側で自由に値下げしてよいか」を確認しておきましょう。ブランドイメージやネットショップ価格との整合性に関わります。
ネットショップで売れないからと安くしすぎると、後から委託販売や卸販売を始めるときに手数料や掛け率を吸収できなくなります。実店舗展開を考えているなら、最初から余白のある価格設計にしておくことが大切です。
実店舗では見せ方も売上に影響する
委託販売や卸販売は、価格条件だけでなく「店舗でどう見えるか」も大切です。
マルシェやイベントでは、遠くから見て何のブースかわからないと、お客さんは近づきにくくなります。実店舗でも同じで、小さなアクセサリーや雑貨は、作品単体だけでは魅力が伝わりにくいことがあります。
可能であれば、店舗に納品するときにショップカード、ブランド説明の小さなPOP、使い方がわかる写真なども一緒に相談してみましょう。
商品を入れる袋にロゴやショップ名を入れると、購入後も思い出してもらいやすくなります。ショップカードを手に取りやすい場所に置けるかどうかも、次の購入やSNSフォローにつながります。
委託販売の場合は、売れ行きが陳列場所に左右されることもあります。店舗任せにしすぎず、「どの商品が遠くから見ても伝わるか」「価格帯の入口になる商品があるか」を考えて納品すると、販売機会を増やしやすくなります。
どちらを選ぶべき?
委託販売と卸販売のどちらが正解というより、今の制作体制と目的に合うほうを選ぶのが現実的です。
委託販売が向いているのは、少量から試したい作家、店舗との相性を見たい作家、季節や一点ものの反応を知りたい作家です。イベントで人気だった作品を別の場所でも試したいときにも合います。
卸販売が向いているのは、同じ商品を安定して作れる作家、まとまった売上を先に確保したい作家、店舗との継続取引を増やしたい作家です。
判断に迷う場合は、次のように考えてみてください。
- まず実店舗で反応を見たいなら委託販売
- 売れ残りを持ち帰る余裕があるなら委託販売
- まとまった納品で売上を作りたいなら卸販売
- 掛け率を下げても利益が残るなら卸販売
- 制作数に限りがあるなら無理に卸を広げない
大事なのは、手取りだけで判断しないことです。
委託販売は手取り率が高く見えても、売れなければ入金されません。卸販売は手取り率が低く見えても、納品時点で売上が確定しやすいメリットがあります。
価格を決めるときの考え方
実店舗取引を考えるなら、ネット販売価格、委託販売価格、卸価格を別々に考える必要があります。
ただし、お客さんから見て不自然な価格差があると、ブランドへの信頼に影響することもあります。BASEでは2,000円、委託先では3,000円、イベントでは1,500円のように差が大きすぎると、どこで買うべきか迷わせてしまいます。
おすすめは、まず通常の販売価格を決め、その中に手数料や掛け率を吸収できる余白があるか確認することです。
たとえば販売価格2,500円の商品を卸掛け率60%で出すと、卸価格は1,500円です。材料費、梱包費、制作時間、納品準備の手間を引いても利益が残るかを見ます。
もし利益がほとんど残らないなら、価格を上げる、卸対象の商品を変える、納品数を調整する、利益率の高い商品と手に取りやすい商品を組み合わせる、といった見直しが必要です。
作りたいものだけでなく、「お客さんが欲しいもの」「店舗で手に取りやすいもの」を考えることも大切です。SNSやイベントで欲しい商品を聞いてみると、実店舗向きの商品づくりのヒントになります。
まとめ
委託販売と卸販売の違いは、手数料や掛け率だけではありません。
委託販売は、売れた分だけ精算される販売方法です。少量から始めやすく、店舗との相性を試しやすい反面、在庫リスクは作家側に残りやすくなります。
卸販売は、店舗に商品を仕入れてもらう販売方法です。納品時点で売上が立ちやすい反面、掛け率によって1点あたりの手取りは低くなりやすいです。
どちらを選ぶ場合も、販売価格から手数料や掛け率を引いたあとに、材料費、制作時間、梱包費、納品の手間を含めて利益が残るかを確認しましょう。
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