ハンドメイド作品の商標登録
ハンドメイド作家が屋号やブランド名を守るために考えたい商標登録のタイミング、区分、費用、自分で申請するか弁理士に頼むかを解説します。
この記事のポイント(読了 約8分)
- -商標登録は売上や認知が伸びてきた屋号を守るための選択肢
- -区分選びは販売する作品だけでなく今後の展開も含めて考える
- -費用は10〜20万円前後を目安に、リスクと事業規模で判断する
商標登録は「売れてから」で遅いこともある
minne、Creema、BASEで販売を続けていると、最初は小さな屋号だった名前が、少しずつお客さんに覚えられていきます。
イベントでショップカードを配る。商品を入れる袋にロゴやショップ名を入れる。SNSで作品名と一緒に屋号を投稿する。こうした積み重ねは、作家活動の大切な資産です。
一方で、その名前を法的に守る仕組みが商標登録です。
「まだ個人作家だから関係ない」と感じる方も多いと思います。実際、活動初期から必ず登録しなければいけないものではありません。ただ、売上が伸びてきた後に同じような名前のショップが出てきたり、逆に他の人が先に登録していたことに気づいたりすると、屋号変更を迫られる可能性があります。
ロゴ、ショップカード、台紙、梱包資材、SNSアカウント、ネットショップの見直しには時間もお金もかかります。商標登録は「今すぐ必要か」だけでなく、「この名前をこの先も使い続けたいか」で考えると判断しやすくなります。
商標登録で守れるもの
商標登録で守れるのは、商品やサービスに使う名前、ロゴ、マークなどです。ハンドメイド作家の場合は、主に屋号、ブランド名、シリーズ名、ロゴマークが対象になりやすいです。
たとえば、アクセサリー作家が長く使っているショップ名、布小物ブランドのロゴ、キャンドル作品のシリーズ名などが考えられます。
ただし、作品そのもののデザインや作り方を守る制度ではありません。デザインには意匠、文章や写真には著作権など、別の考え方があります。商標はあくまで「お客さんがその名前を見たとき、どこの商品か識別できるもの」を守る制度です。
屋号が育ってくると、お客さんは作品単体ではなく「この作家さんのものだから買いたい」と感じてくれます。その信用を守るための仕組みが商標登録だと考えると、少し身近になります。
検討したいタイミング
商標登録には費用がかかるため、活動開始と同時に無理をして進める必要はありません。目安になるのは、屋号を変えることの損失が大きくなってきたときです。
たとえば、次のような状態なら一度調べてみる価値があります。
- minne、Creema、BASEなどで継続的に売上が出ている
- イベント出店で屋号を覚えてくれるお客さんが増えた
- ショップカード、台紙、袋、タグなどにロゴを印刷している
- SNSのフォロワーが増え、屋号で検索されるようになった
- 委託販売、卸販売、コラボ企画を考えている
- 将来的に講座、キット販売、デジタル販売などへ広げたい
イベントでは、袋にロゴやショップ名を入れると持ち歩いてもらうだけで宣伝になり、帰宅後にも思い出してもらいやすくなります。ショップカードも手に取りやすい場所に置くことで、後日の購入につながることがあります。
こうした販促を本格的に始めるほど、屋号はただの名前ではなくなります。印刷物や認知が増える前に一度確認しておくと、後からの作り直しを避けやすくなります。
区分の選び方は作品ジャンルだけで決めない
商標登録では「区分」を選びます。区分とは、どの商品やサービスにその商標を使うのかを分類するものです。
ハンドメイド作家の場合、アクセサリー、バッグ、衣類、文具、雑貨、講座、オンライン販売など、活動内容によって関係する区分が変わります。ここで大切なのは、今売っているものだけでなく、近い将来やりたいことも含めて考えることです。
たとえば、現在はアクセサリー販売だけでも、今後ワークショップを開催したり、キットや型紙を販売したり、オリジナルグッズを業者に依頼して作ったりする可能性があります。すべてを広く取りすぎると費用が増えますが、狭すぎると守りたい範囲をカバーできないことがあります。
「自分や周りの誰かがほしいものを作る」という視点で商品展開を広げている作家さんほど、区分選びは慎重に見たいところです。ステッカーや紙もの、布小物、講座などへ自然に広がるブランドなら、最初の商品ジャンルだけで判断しないほうが安心です。
費用の目安は10〜20万円前後
商標登録にかかる費用は、自分で出願するか、弁理士に依頼するか、何区分で出すかによって変わります。
自分で出願する場合は特許庁に支払う印紙代が中心になります。弁理士に依頼する場合は、調査、出願書類の作成、手続きの代行、登録時の対応などの報酬が加わります。
ハンドメイド作家が1〜2区分で検討する場合、弁理士費用込みで10〜20万円前後を見ておくと現実的です。もちろん依頼先や区分数によって変わるため、正式には見積もりを取りましょう。
この金額は小さくありません。特に月の利益がまだ安定していない段階では、材料費、出店料、撮影、梱包、広告、在庫管理などに優先してお金を使うべき場面もあります。
だからこそ、商標登録は「不安だから今すぐ」ではなく、「屋号を変えた場合の損失」と「登録費用」を比べて判断するのが現実的です。
自分でやるか、弁理士に頼むか
商標登録は自分で出願することもできます。費用を抑えたい場合には選択肢になります。
ただし、商標は名前を出せば必ず登録されるものではありません。すでに似た商標がある場合、一般的すぎる名前の場合、区分の指定が適切でない場合などは、登録できないことがあります。
自分で進めやすいのは、次のようなケースです。
- 屋号が比較的独自性のある名前
- 使う商品ジャンルが明確
- 調査や書類作成に時間をかけられる
- 不備があった場合も自分で対応できる
一方で、すでに売上が大きい、複数ジャンルで展開している、委託や卸を予定している、似た名前のショップがある、将来的に法人化も考えている場合は、弁理士に相談する価値があります。
ネットショップでSEOや検索対策を専門家に頼むのが効率的な場面があるように、商標も専門家に任せたほうが結果的に安く済むことがあります。自分の時間を制作や販売に使える点も含めて考えたいところです。
登録しないリスク
商標登録をしないこと自体が悪いわけではありません。小さく活動している間は、費用対効果が合わないこともあります。
ただし、リスクは知っておく必要があります。
まず、他の人が同じまたは似た名前を先に登録した場合、自分がその屋号を使い続けにくくなる可能性があります。長く使っていたとしても、商標の世界では「先に出願した人」が強くなる場面があります。
次に、似た名前のショップが増えたときに、お客さんが混乱することがあります。イベントで「この前見たお店かな」と思われたり、SNS検索で別のアカウントに流れたりすると、積み上げてきた認知が分散してしまいます。
さらに、委託先やコラボ相手から「このブランド名は使って大丈夫ですか」と確認されることもあります。事業として扱われる場面が増えるほど、名前の権利関係は見られやすくなります。
価格設定ともつながる屋号の価値
商標登録は法律の話に見えますが、実は価格設定ともつながっています。
お客さんが「この作家さんの作品だから買いたい」と思ってくれる状態は、価格を下げずに選ばれる理由になります。素材費と制作時間だけで価格を決めると、ブランドとして積み上げてきた信頼が抜け落ちてしまいます。
ロゴ入りの袋、ショップカード、イベントでの会話、SNSでの発信、作品の世界観。これらはすぐに数字にしにくいものですが、屋号の価値を育てる活動です。
商標登録をするかどうかは、その価値をどこまで守りたいかの判断でもあります。今は登録しないとしても、屋号が育っていることを前提に、価格や販促費を考えていくことは大切です。
まずは名前の棚卸しから始める
いきなり出願する前に、まずは自分のブランド名を整理してみましょう。
屋号、ロゴ、作品シリーズ名、SNSアカウント名、ネットショップ名がバラバラになっていないか。検索したときに似た名前が多すぎないか。今後もその名前で活動を続けたいと思えるか。
そのうえで、売上が伸びてきたタイミング、印刷物を増やす前、委託販売や卸販売を始める前、講座やキット販売に広げる前に、商標登録を検討すると無理がありません。
商標登録は、すべての作家に同じタイミングで必要なものではありません。でも、屋号が作品と同じくらい大切になってきたなら、一度きちんと向き合う価値があります。
作品価格を考えるときは、材料費や制作時間だけでなく、屋号やブランドの育ち方も含めて見直せる「ねだんナビ」の価格診断ページも活用してみてください。
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