ハンドメイドの卸価格と掛け率|最低ロットと利益計算の基礎
雑貨店との卸取引で使う掛け率、最低ロット、納品価格、利益が残る計算例を解説。小売価格1,000円なら掛け率50〜70%で卸価格は500〜700円が目安です。
この記事のポイント(読了 約8分)
- -卸価格は「小売価格 × 掛け率」で計算し、掛け率50〜70%の範囲で利益が残るラインを確認する
- -最低発注数は「合計5点から」「1万円以上から」など、梱包・事務の手間を吸収できる下限で決める
- -委託販売と卸販売は手数料やリスクの持ち方が違うため、取引前に条件を分けて整理する
卸価格・掛け率・最低発注数の早見表
ハンドメイド作品を雑貨店に卸すときは、最初に「卸価格はいくらか」「掛け率は何%か」「最低発注数はいくつか」を決めます。基本の計算式は次の通りです。
卸価格 = 小売価格 × 掛け率
たとえば小売価格1,000円の商品を掛け率60%で卸すなら、納品価格は600円です。材料費・梱包費・制作時間を差し引いて利益が残るかを、この600円を基準に確認します。
| 小売価格 | 掛け率50% | 掛け率55% | 掛け率60% | 掛け率65% | 掛け率70% |
|---|---|---|---|---|---|
| 1,000円 | 500円 | 550円 | 600円 | 650円 | 700円 |
| 1,500円 | 750円 | 825円 | 900円 | 975円 | 1,050円 |
| 2,000円 | 1,000円 | 1,100円 | 1,200円 | 1,300円 | 1,400円 |
| 3,000円 | 1,500円 | 1,650円 | 1,800円 | 1,950円 | 2,100円 |
最低発注数は、1回の注文で梱包・納品書作成・発送・入金確認の手間を回収できる量にします。目安は「合計5点から」「1回1万円以上から」「同一商品3点以上から」などです。小物中心なら点数、単価が高い作品なら金額で下限を決めると運用しやすくなります。
卸で使う用語を先に整理したい場合は、ハンドメイド卸取引の用語集もあわせて確認しておくと、雑貨店とのやり取りがスムーズになります。
「お店に置きませんか」と言われたら
イベントやオンラインで作品を見た雑貨店・セレクトショップの方から、「うちのお店に卸してもらえませんか」と声がかかることがあります。うれしい一方で、いざ価格の話になると戸惑う作家さんは少なくありません。普段は自分でminneやCreemaに値段をつけて売っているのに、卸となると「いくらで渡せばいいの?」と急に基準がわからなくなるからです。
卸取引には、小売とは別のルールと相場があります。ここを知らないまま「とりあえずこのくらいで」と返事をしてしまうと、作るほど赤字という事態にもなりかねません。逆に基礎を押さえておけば、自信を持って金額を提示でき、お店との関係も長続きします。
この記事では、卸価格の中心になる掛け率、最低発注ロット、納品書の作り方という3つの基本を整理していきます。
掛け率とは何か——相場は55〜70%
卸価格は「掛け率」で表すのが業界の習慣です。掛け率とは、小売価格に対して卸価格が何%かを示す数字のこと。たとえば小売1,000円の商品を掛け率60%で卸すなら、お店に渡す価格は600円になります。残りの400円がお店の取り分(粗利)です。
ハンドメイドや雑貨の卸では、掛け率はおおむね55〜70%が相場とされています。数字が小さいほどお店の取り分が大きく、作家の手取りは減ります。一般的な目安はこんな感じです。
- 掛け率70%前後:お店の負担が少なく、作家に有利。小ロットや委託に近い形で多い
- 掛け率60%前後:もっとも標準的なライン。買い取りでよく使われる
- 掛け率55%前後:お店がリスクを取って多めに買い取る場合や、量販を見込む場合
大切なのは、相場をそのまま受け入れるのではなく、自分の原価から逆算することです。材料費と制作時間を時給換算した「本当の原価」が小売価格の50%を超えているなら、掛け率60%では手元にほとんど残りません。その場合は「うちの作品は手間がかかるので65%でお願いしたい」と交渉する根拠になります。掛け率は言い値ではなく、原価の裏付けがあって初めて説得力を持ちます。
たとえば小売価格2,000円、掛け率60%なら卸価格は1,200円です。材料費350円、梱包資材100円、制作時間30分を時給1,200円で見るなら人件費は600円。合計原価は1,050円なので、手元に残る利益は150円です。この場合、掛け率65%なら卸価格は1,300円、利益は250円になります。ほんの5%の差でも、まとまった注文では大きな違いになります。
ネットショップで「売れないから」と値下げをくり返していると、その安い小売価格を基準に掛け率を計算され、卸では完全に赤字、という流れに陥りがちです。卸を視野に入れるなら、小売価格そのものを安易に下げないことが効いてきます。
委託販売と迷っている場合は、ハンドメイド委託販売の手数料相場と契約の注意点も確認しておくと、卸と委託のどちらが自分に合うか判断しやすくなります。
最低発注ロットで小口対応の消耗を防ぐ
卸で見落としがちなのが、注文1件あたりの手間です。1点だけ注文されても、梱包し、納品書を書き、発送し、入金を確認する作業はほぼ変わりません。小ロットの注文に毎回個別対応していると、事務作業に時間を取られて本業の制作が進まなくなります。
そこで設けるのが最低発注ロット(最低発注数量・最低発注金額)です。「合計5点から」「1回のご注文は1万円以上から」といった下限を最初に伝えておけば、お互いに気持ちよく取引できます。お店側も「まとめて頼むもの」と理解してくれるので、結果的にロットがまとまり、あなたの利益率も上がります。
最低発注数を決めるときは、注文1件あたりにかかる固定作業を先に見積もります。梱包に20分、納品書と請求書に15分、発送手配に15分かかるなら、注文ごとに約50分の事務作業が発生します。1点だけの注文ではこの時間を回収しにくいため、少なくとも5点以上、または1万円以上などの下限を置くほうが現実的です。
このとき、利益率の高い主力商品と、手に取りやすい低価格の商品を組み合わせてラインナップを提案するのも有効です。お店としても価格帯の幅があると棚を作りやすく、来店客の目に留まりやすくなります。すべてを一から手作りせず、ステッカーやしおりのような小物は業者に印刷してもらえばコストを抑えられ、ロットの「数合わせ」にも使えます。
納品書・請求書は項目さえ押さえれば手書きでも通る
卸取引が始まると必要になるのが納品書です。「正式な書類なんて作れない」と身構える必要はありません。決まった項目さえ入っていれば、テンプレートでも手書きでも十分通用します。納品書に最低限載せたいのは次の内容です。
- 発行日と納品書番号
- 宛先(お店の正式名称)と自分の屋号・連絡先
- 商品名・数量・卸単価・小計
- 合計金額(必要なら消費税の扱いを明記)
請求書も基本の構成は同じで、振込先と支払期限を加えれば形になります。インボイス制度の登録をしている場合は登録番号を記載しますが、登録の要不要は取引相手や自分の売上規模によって変わるので、ここは一度確認しておくと安心です。
書類のやり取りが発生する関係になったら、入金の確認や納品履歴を残す習慣もつけておきましょう。取引先が増えてきたら在庫・受注管理の仕組みを導入する手もありますが、扱う商品数がまだ少ないうちは手書きやスプレッドシートで十分です。仕組みは規模に合わせて少しずつで構いません。
卸を始める前に、自分の小売価格を見直す
卸価格はすべて小売価格を起点に決まります。だからこそ、卸の話が来る前に「そもそも自分の小売価格は適正か」を確かめておくことが、卸でも利益を残す一番の近道です。原価を割り込んだ小売価格のまま掛け率をかければ、当然どこかで無理が出ます。
卸の条件を考えるときは、小売価格、卸価格、最低発注数、送料負担、支払期限をひとまとめにして確認します。掛け率だけを見ると悪くない条件に見えても、少量注文で送料を作家側が負担するなら利益は削られます。逆に掛け率がやや低くても、まとまった数量で継続的に注文が入るなら制作計画を立てやすくなります。
自分の作品の小売価格が市場の中でどの位置にあるのか、原価から見て妥当なのかを客観的に知りたいときは、ねだんナビの価格診断で一度チェックしてみてください。
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