「あのとき、安く売ったことを今も後悔してる」—ある作家の話
初めてのイベントで安く売ってしまった経験から学んだ、価格設定の大切さ。他人の言葉に揺らされず、自分の基準を持つことの重要性を語ります。
これは、あるハンドメイド作家さんの話。
……いや、もしかしたら、昔の私自身の話かもしれません。
「すごく可愛い!これ、〇〇円だったら欲しいな〜」
初めてイベントに出店した日。 朝から緊張しながらディスプレイを並べて、手が震えるような気持ちでお客さんを待っていた私。
ようやくブースの前に立ち止まってくれたお客さんが、作品を手に取り、言ったのがこのひとことでした。
「これ、すごく可愛い!……〇〇円くらいだったら、絶対買うのにな〜」
当時の私は、それが軽口だとも思わず、心にぐさりと突き刺さってしまって、 その場で価格を書き換えてしまったのです。
まさに、その価格に。
売れた。けど、何も嬉しくなかった。
結果として、その作品は売れました。 安くしたことで、「これください!」と言ってもらえた。
でも、家に帰って、売上を計算したときに、 「……あれ? 原価引いたら、利益ってほとんどないな」 と気づいた瞬間、嬉しさはどこかへ消えてしまいました。
あんなに時間をかけて作ったのに、 パーツの選定にもこだわって、写真だって何度も撮り直したのに、 結局、自分の時間も気持ちも"無料"で差し出したような気持ちになってしまったのです。
「あのとき、断ってもよかったのかもしれない」
あの時の私に、今なら言ってあげたいです。
「そのままの価格でよかったんだよ」 「その人が買わなくても、あなたの作品を好きになってくれる人はいたよ」
でも、当時はそんなふうに思えなかった。 一つでも売れたかったし、誰かに喜んでもらいたかった。
ただ、やっぱり思うのです。 "あの価格"で売ったことを、今もどこかで引きずっている。 あれをきっかけに、「下げれば売れる」「高いと売れない」という思い込みが染みついてしまったからです。
自分の"基準"を持つということ
それ以来、私は少しずつ、自分なりの価格の付け方を模索してきました。
- 材料費に加えて、制作時間を時給換算する
- 同ジャンルの作家さんの価格帯を参考にする
- でも、最終的には「この価格でなら、自信を持って送り出せるか?」で決める
何より大事なのは、「誰かの言葉で、価格を揺らされないこと」。
それが、自分自身を守ることだと気づいたのです。
ねだんナビをつくった理由
価格で悩んだり、他人の言葉に傷ついたり、 売れたのに虚しさが残ったり——そんな経験をたくさんしてきたからこそ、 「同じ思いをする人を少しでも減らしたい」と思いました。
だから私は「ねだんナビ」を作りました。
これは、価格の"正解"を出すツールではありません。 でも、あなたの価格が「まったくズレていないこと」や、 「このジャンルならこのくらいの目安」という"安心"は得られます。
それだけでも、だいぶ違うんです。
他人の一言に揺れる前に、自分の中にある"判断材料"を持っておける。 それは、あなたの心の安定につながります。
あなたが後悔しない価格を。
この記事は、昔の自分に向けて書いた手紙のようなものです。
あのとき、ちゃんと「この価格が自分にとって納得できる」と思えていたら、 売れたときにもっと嬉しかったかもしれない。
もちろん、値下げが悪いわけではありません。 でも、それが「誰かの言葉に合わせて決めた価格」なら、 あとでじわじわ後悔がやってくるかもしれない。
あなたの作品は、あなたが納得できる価格で、売っていいんです。
今日もまた、作品を大切に届ける作家さんの背中を、 そっと押せますように。
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