端数価格vsキリ良い価格、ハンドメイドに効くのは?
980円と1000円、ハンドメイドではどちらが売れる?端数価格とキリ良い価格が購買行動に与える影響を、作家のリアルな現場感覚とジャンル別の使い分けで解説します。
この記事のポイント(読了 約8分)
- -端数価格(980円)は「お得感」、キリ良い価格(1000円)は「価値感」を演出する
- -ハンドメイドは「手作りらしさ」と相性が良いため、キリ良い価格が機能しやすい場面が多い
- -ジャンル・販売チャネル・価格帯で使い分けると効果が出やすい
980円と1000円、たった20円の差で何が変わるのか
スーパーやドラッグストアで「980円」という値札をよく見かけます。1000円ではなく、あえて980円。この20円の差にどんな意味があるのか、考えたことはあるでしょうか。
これは「端数価格効果」と呼ばれる、長年マーケティングで研究されてきた現象です。人は価格を見るとき、左側の数字を強く意識する傾向があります。980円は「9から始まる価格」、1000円は「1000円台」と認識されるため、実際の差以上に「安い」と感じやすくなるわけです。
ではこの理論、ハンドメイド作品にもそのまま当てはまるのでしょうか。結論から言うと、当てはまる場面と、むしろ逆効果になる場面があります。
端数価格が向いている商品、向いていない商品
端数価格が効きやすいのは「比較されやすい商品」です。同じようなステッカーやキーホルダーがネット上に並んでいて、お客さんが価格で比較検討する状況では、980円と1000円の見え方は確かに違います。
一方で、ハンドメイドの強みである「一点もの」「作家の世界観」「素材へのこだわり」を打ち出した作品では、端数価格が逆効果になることもあります。なぜなら、端数価格は「お買い得感」を演出する手法だからです。1点ものの陶器に「2980円」と値段がついていると、なんとなくチェーン店の量産品のような印象を受けてしまうことがあります。
作家性が強い作品ほど、3000円・5000円・8000円といったキリ良い価格のほうが、作品そのものの価値が伝わりやすい傾向があります。
マルシェ・イベントではキリ良い価格が圧倒的に楽
対面販売の現場では、価格表記の心理効果よりも、もっと現実的な問題が優先されます。それは「お釣りの計算」です。
980円の商品が3つ売れたら2940円。1980円の作品と780円の小物を一緒に買ってもらったら2760円。電卓を出して計算するのは、お客さんを待たせることになりますし、混雑時には作家側もミスが増えます。
500円・1000円・1500円・2000円といったキリ良い価格にしておくと、暗算で完結します。複数買いの「セット価格」も設定しやすくなります。「3点で3000円」のような表記は、端数価格では作りにくいものです。
イベントではブースの作り方も売上を左右します。商品が遠くからでも見えるようにポップを工夫したり、目を引くキャラクターを置いたり、人が自然と立ち止まる導線を作ることが、価格表記以上に効くこともあります。
ネット販売では「価格帯のゾーン」を意識する
ネットショップでは、検索結果や一覧ページで価格が並んで表示されます。ここで意識したいのが「価格帯のゾーン」です。
minneやCreemaで価格でソートしたとき、お客さんは無意識に「1000円台」「3000円台」「5000円以上」といったゾーンで商品を見ています。1980円と2000円は、同じ「1000円台と2000円台の境界」にあります。だったら2000円にしてしまったほうが、心理的な抵抗を減らさずに利益を確保できます。
逆に、980円と1000円では「3桁と4桁」の壁を越えるかどうかという別の意味が出てきます。低単価の入門商品で、初めての購入のハードルを下げたいなら980円は有効です。
価格を決めるときは、自分の商品が並ぶ価格帯の競合がどんな表記をしているかを一度確認してみるのがおすすめです。
ジャンル別の使い分けの目安
- アクセサリー・布小物(1000円〜3000円帯):キリ良い価格が世界観と合いやすい
- ステッカー・キーホルダーなど低単価サブ商品:端数価格で「気軽に買える感」を演出
- 陶器・革製品・木工など一点もの高単価作品:キリ良い価格で価値を伝える
- オーダーメイド・セミオーダー:キリ良い価格で見積もりを伝えやすく
- セット販売・福袋:「3点で◯◯◯◯円」のキリ良い価格が圧倒的に伝わる
利益率重視の作品と、知ってもらうきっかけになる手に取りやすい商品で、価格表記を変えるという考え方もあります。低単価商品で端数価格を使って入口を広げ、メイン商品はキリ良い価格で価値を伝える、という組み合わせです。
「自分の作品にはどちらが合うか」を考える視点
価格表記に正解はありません。ただ、判断の軸はいくつか持っておくと迷いません。
判断の参考になる問いを挙げておきます。
- この作品は「お得感」と「価値感」、どちらを伝えたいか
- 比較されやすい商品か、それとも一点ものか
- 主な販売チャネルは対面か、ネットか
- 価格帯のゾーンの境界線にあるか
- お客さんが衝動買いしやすい価格帯か、検討して買う価格帯か
価格表記は小さな選択ですが、積み重なると売上にも作品の見え方にも影響します。一度決めたら変えられないものではないので、季節やイベントに合わせて試してみるのも良い方法です。
自分の作品に合った価格帯がわからないときは、ねだんナビの価格診断で、市場データをもとにした適正価格の目安を確認してみてください。
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